滝の前に立つと心が爽快となり、全身に活力がみなぎるのを覚える。
医学的には、マイナスイオン効果によるものだそうだ。即ち、滝を落下して飛び散る飛沫により、マイナスに帯電した空気イオンが立ちこめ、このマイナスイオン化した微粒子を浴びる(飛沫浴)と、喘息、ストレス、不眠症などに有効で、、マイナスイオンは血液を弱アルカリ性に保つ効能のほか細胞を活性化し、体内の老廃物を排出する効果があるのだといわれている。

滝との出会いを求めて濃い深山の渓谷に分け入り、森の香りと滝のしぶきを同時に浴びることになれば、「森林浴」と「飛沫浴」の相乗効果をきたし、健康増進の効果は更に高まり、まさに天恵の健康法といえよう。

私は、55歳のときに初めて、滝に関してベテランの先輩に兵庫県温泉町の霧ヶ滝・赤滝に連れて行っていただいた。この名瀑との出会いをきっかけにして、すっかり滝の魅力の虜となってしまった。
足腰の丈夫なうちに100滝達成をと滝紀行を始め、それからというものは時間をさいてはカメラを担ぎ、全国各地の滝巡りをしている。

緑の森を何時間も歩き廻ったり急峻な渓谷を死ぬ思いで登ったりして、ようやくのことで目的地に辿り着いて、そこで壮厳な滝の姿を目にしたときの感動と満足感は、他ではそう味わえるものではない。滝巡りをすることによって、足腰は鍛えられるし、喧噪から逃れて新鮮な空気一杯の緑のオアシスに抱かれば健康にもよく、日頃のストレス等は吹き飛んでしまう。私にとっての滝巡りは、まさに実益を兼ねた健康的な趣味だといえよう。



                  
 
100滝巡りを始めて6年、平成16年2月にやっと念願の完全踏破を成し遂げることができた。僅かな時間を見つけては日本中を駆けめぐり、最後の屋久島「大川の滝」を終えたことにより、これで日本100滝の全ての姿をカメラに収めたことになる。  

美しい滝の風景を撮るのは非常に難しく、満足できるものはほんの数枚の写真にすぎない。 春の萌え出る緑に囲まれた姿、秋の紅葉映える姿、春先の満々とした水量を放つ姿など四季折々によって滝の姿は大きく変貌する。また、写真の出来上がりは撮影時の天気や時間帯等によって大きく左右する(撮影の腕前は当然のこと)。強行日程のため時間的な制約が大きく、苦労のすえ目指す滝にたどり着いても、あいにくの雨降りやガスが出たとか夕暮れになってしまったなど悪条件による失敗も数々で、思ったような写真はなかなか撮れない。

しかしながら、滝巡りはただ単に写真を撮るだけではなく、大自然を全身に浴び、地元の人とも触れ合い、語らい、その土地々の美味しい郷土料理に舌鼓を打つなど別の楽しみもある。
100滝の写真にこだわり、気に入らないものについては、同じ滝でも2回、3回と訪れ、写真の撮り直しをしているところである。、満足したものが撮れるまで今後もずっと滝巡りを続けるつもりでいる。
                                     (さすらいの滝人 佐々木信一郎)